肉眼解剖学

人体構造を再整理し、新しい解剖学を提唱

肉眼解剖学は19世紀に優れた著作がすでに多数出版され、完成度の高い学問分野と言えます。しかし、現代においても、臨床、スポーツ、芸術、そして歴史の視点から人体の構造に新しい意味が見出されており、古典的な解剖学の記述との融合が必要となっています。我々の研究室では熟練した教員が医学生の教育を担当しており、その肉眼解剖の技術と知見を生かしながら、臨床各科を含めた様々な分野と職種の人たちが現代の視点から肉眼解剖学の研究に取り組んでいます。

研究テーマは人体構造の多岐に渡りますが、3つの研究グループを核として研究が進められています。肉眼解剖領域でも大学院生(修士・博士)を随時募集しています。

筋学グループ

大学院生、木村、姉帯、加藤、市村、坂井

個々の骨格筋の内部形態(特に筋内腱の立体構造)は筋の易受傷性と関連することが分かっていますが、遺体を用いた筋構造の詳細な研究は意外に少ないのが現状です。また、骨格筋には、骨格・靭帯や脈管と同様に、幅広い形態バリエーションが見られますが、このこと自体ほとんど認知されていません。筋学グループでは人体の全骨格筋について外部形態・内部形態・形態バリエーションを再精査し、機能解剖学、臨床解剖学の観点からも考察を加えた研究を行っており、その成果の1つとしてモノグラフの刊行を予定しています。

関連する論文

  • Yoshida S, Ichimura K, Sakai T.
    Structural diversity of the vastus intermedius origin revealed by analysis of isolated muscle specimen.
    Clin Anat 30:98-105 (2017)
  • Kumazaki T, Sakai T.
    High risk of muscle strain in the quadriceps femoris muscle: anatomical and physiological analysis.
    Juntendo Med J 62: 392-398 (2016)
  • Kumazaki T, Ehara Y, Sakai T.
    Anatomy and physiology of hamstring injury.
    Int J Sports Med 33: 950-954 (2012)
    (下線の著者は当講座の教室員)

血管学グループ

大学院生、市村、工藤

日本人における動脈系の肉眼解剖学的な研究は1900年代初頭に足立文太郎教授(京都帝大)により精力的に進められました。その成果は『Arteriensystem der Japaer (全2巻)』として出版され、動脈系の正常構造・解剖学的変異に関する記述は現在においても世界的に参照・引用されており、動脈研究のバイブルとして位置付けられています。しかし、現在では入手が困難であること、記載がドイツ語であること、変異の分類等に難解な部分が多いこと、などの短所もあり、より利便性の高い書籍の刊行が望まれています。血管学グループでは、現代の解剖学者の手によって、新しい観点から動脈系の肉眼形態を再調査・再記載し、その成果を出版することを目指しています。

関連する論文

  • Kinose S, Kanaya Y, Kawasaki Y, Okamura T, Kato K, Sakai T, Ichimura K.
    Anatomic characterization of radial and ulnar nutrient arteries in humans.
    Ann Anat 216: 23–28 (2018)
  • Ichimura K, Kinose S, Kawasaki Y, Okamura T, Kato K, Sakai T.
    Anatomic characterization of the humeral nutrient artery: application to fracture and surgery of the humerus.
    Clin Anat 30(7): 978–987 (2017)
  • Ichimura K, Kinose S, Kawasaki Y, Kato K, Sakai T.
    Reevaluation of the superior radial collateral artery in the human upper arm.
    Anat Sci Int 93(1): 69-74 (2018)
  • Machida S, Kudoh H, Sakai T.
    Diversity of arterial branches in the crural and foot region as correlated with the relative thickness of the fibular and posterior tibial arteries.
    Juntendo Med J. 61: 294-301 (2016)
  • Serita T, Kudoh H, Sakai T
    Variability of the arterial distribution to the rotator cuff muscles and its correlation with the diversity of arterial origin.
    Jundendo Med J. 60: 137-146 (2014)
    (下線の著者は当講座の教室員)

臨床解剖学グループ

臨床講座医師、工藤、坂井

主として本学外科系講座の臨床医が遺体を用いた臨床解剖学的な研究を随時実施しています。

関連する論文

  • Yoshida K, Itoigawa Y, Maruyama Y, Saita Y, Takazawa Y, Ikeda H, Kaneko K, Sakai T, Okuwaki T
    Application of shear wave elastography for the gastrocnemius medial head to tennis leg.
    Clin Anat 30:114-119 (2016) 
    (整形外科学講座との共同研究)
  • Nojiri H, Miyagawa K, Iwase Y, Kudoh H, Sakai T, Kaneko K.
    The branches of lumbar artery running vertically on the intervertebral disc of the lower lumbar spine: anatomical study.
    Eur Spine J 25: 4195-4198 (2016)
    (整形外科学講座との共同研究)
  • Hayashi A, Labbe D, Natori Y, Kudoh H, Sakai T; Mizuno H.
    Our experience and anatomical study of modified lengthening temporalis myoplasty for established facial paralysis.
    J Plast Reconstr Aesth Surg 68(1): 63-70 (2015)
    (形成外科学講座との共同研究)