3D超微形態解析

3D電子顕微鏡で解き明かす細胞の姿

市村、宮木、川崎、甘利、坂井

組織・細胞・オルガネラの断面像をCTのように連続で撮影し、これをもとに特定の構造をミクロン・ナノレベルで立体再構築する3D電子顕微鏡技術(FIB/SEM法)が普及しつつあります(Fig. 1)。

この方法で作製された立体再構築像は任意の方向から観察ができ、従来の電顕法では観察が困難だった糸球体足細胞(ポドサイト)の裏面構造についても正確に把握することができるようになりました(Fig.2)。

私たちはFIB/SEM法をいち早く活用し、糸球体足細胞(Figs. 3, 4, 5)においてこれまで知られていなかった細胞構造を見出し、足細胞の構造階層を正確に記載するとともに(Fig. 6)、複雑な足細胞の発生過程を完全に解明しました(Figs. 7, 8, 9, 10)。

現在は、糸球体病変の病理形態解析におけるFIB/SEM法の活用にも取り組んでおり、これまで断片的にしか分かっていない「足突起消失Foot process effacement」の進行過程などを明らかにしました(投稿中)。さらに、多細胞動物における足細胞の進化・多様化の過程についてもFIB/SEM法を活用し解析を進め、脊椎動物における足細胞進化(Figs. 11, 12)や甲殻類における足細胞類縁細胞(ネフロサイト)の構造進化に関して興味深い発見がありました(投稿中)。

これらの研究成果は国内外の研究者から高い評価を受けており、今後は足細胞の3D超微形態解析を「Health, Disease, Development, Aging, Evolution」の5つの観点からさらに深化させるとともに、他の糸球体構成細胞の解析においてもFIB/SEM法の活用を進めて行きたいと考えています。また、FIB/SEM法を糸球体疾患の病理診断に応用すべく、その基盤作りも合わせて進めています。

上記の研究に関し、大学院生(修士・博士)、研究生を随時募集中しています。形態学を基盤とした細胞生物学研究に興味をお持ちの学生さん、形態学に親和性の高い学生さん、電子顕微鏡に関心をお持ちの学生さん、出身分野を問わず大歓迎です。

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    Wilhelm Kriz教授(ハイデルベルク大学)による解説記事が同時掲載されました。
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    (下線の著者は当講座の教室員)

研究が紹介されたウェブサイト